「離婚」か「死亡」か戸籍の扱いも違う
たとえば「夫が失踪した」と相談した場合に、「どこに行ったの?」とまず聞きかれますよね。
実は、「どこかに隠れた」のか「連絡もつかず帰ってこない」のかで、離婚ができるかできないかも違ってくるんですね。
- 失踪したら3年で離婚できるのが「失踪で離婚」
- 失踪して7年経っても離婚できないのが「失踪宣告」
です。
『失踪』が原因となる場合、法律上は戸籍に「失踪で離婚」と書かれるか、「失踪宣告」と書かれるか、2種類あります。
失踪した後に、離婚するか、離婚しないのかを決めたいとき、どちらで進めるかによって方向性が変わってきます。
離婚できないのが、離婚するための条件は失踪宣告と違っていて、3年で離婚できる場合というのは、「生死が明らかでない」くらいコンタクトもとれない状態が必要なんです。
ここでは、「失踪で離婚」と「失踪宣告」の2種類の失踪について、詳しく説明しますね。
離婚では2種類ある「失踪」
民法770条の「失踪」なら離婚できる
3年前、突然、夫が蒸発したんです。
警察にも捜索願を出し、その後、電話すらなく、生死さえわからない状態が3年以上続きました。
今は、法律上も離婚して、法律上きっちり縁を切りたい白黒つけたいのですがどうすればいいですか?
夫と連絡が取れない期間が3年だと、夫を「失踪宣告」にすることはできないのですが、離婚することはできますよ。
離婚に関しては、770条に失踪について書かれているんですね。
第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 二(省略)
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 五
この条文にあるように、夫婦のどちらかがが 失踪して3年 経てば、離婚訴訟を起こして判決で離婚することができます。
裁判離婚で「判決」によって、「離婚しなさい」となる場合には、
通常は、夫婦で協議→調停→離婚訴訟
となるはずです。
ですが、この失踪による離婚の場合は、調停を申し立てる必要がないんですね。
ただ、この訴えは、770条の条文に書いてあるように、夫が「生死不明」でなくてはならないんです。
ちょくちょく電話したり、LINEしたりしてたら、生死不明とは言えないんですね。
「どこかに隠れちゃった」では、生きていることがわかるので、生死不明ではないんですね。
詳しくは→相手が失踪して行方不明なら離婚できるし離婚調停も不要
本来は離婚裁判は調停を経なければ、裁判をする事はできないのですが、この場合は通常の離婚裁判の流れとは違うイメージです。
結果として、離婚判決を得ることになるので、戸籍には「離婚」の文字が残ります。
夫が3年以上前に蒸発して音沙汰もない。
もう、自分は新しい人生を切り開きたい、と思っているなら、法律上「夫が失踪して離婚」という形で、きっちり縁を切る方法を使った方がいいですね。
民法30条の「失踪」は「離婚」にはならない
もう一つ、失踪に関しては、民法30条に失踪宣言の条文があります。
民法30条での「失踪宣告」は、離婚以外でよく言われることのある「失踪」です。
(失踪宣告)
第30条
- 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
- 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
この場合の失踪は、法律上、死んでしまった、という扱いになるんですね。
そのまま夫婦の場面にあてはめると、夫婦生活をして、片方の配偶者が亡くなっても離婚したことにはならないですよね。
その場面と同じなんです。
民法30条の方は、失踪しても7年間消息がわからなければ、失踪宣言をすることで、法律上「死者」とする、ということなんです。
よくある事例としては、船で遭難した、とか、なんらかの事件に巻き込まれた、という物騒な感じですね。
死亡したのですから「離婚」にはならない、ということです。
もし、法律上すぐにでも縁を切る必要がなかったり、「戸籍を汚したくない」なんて思っているなら、失踪宣告という方法もあるんです。
失踪したままで離婚していないと戸籍上次に進めない
法律上、夫婦のままだと、いい人が見つかったとしても、再婚することも躊躇してしまいますよね。
できるだけ、法律上早めにケリをつけて、自分の幸せをつかみたいなら、失踪で離婚した方がいいです。
逆に、相手がどこにいるのか心配で心配で、ずっと待ち続けている、のなら離婚する必要もないですよね。
失踪なのかわからないけど、新しく人生の再スタートを切りたいと考えているなら、そうとう悩んでいるはずですよね。
実際に、離婚や相手の失踪のことで悩んでいたり知りたいことがあれば、まずは家庭裁判所に行くといいです。
もちろん、「離婚できるか、できないか」の判断はしてくれませんが、主に手続き的なことであれば、わかりやすく教えてもらえます。