養育費を放棄する裁判例は判断が分かれている

養育費を請求するしないでもめている離婚しそうな夫婦

 

離婚するときに、「親権」でいざこざがあると、

 

とりあえず子供の親権だけあればいいから、どうしても早く離婚したい!

 

だったら、子供に関するお金は一切出さない!

 

こんなやりとりがあると、

 

養育費はいらないから、早く離婚届に印鑑を押して〜

 

って

 

養育費の請求をしないことで離婚の決着をつけてしまいがちです。

 

でも、養育費は子供の権利です。

 

親が、養育費をもらう権利を放棄できるのか、が問題になることがあります。

 

離婚裁判での判例は、養育費の請求権の放棄は無効かどうかについては、

 

「扶養」という別の面からみて、判断が分かれています。

 

ここでは、離婚の裁判例を通して、親が養育費をもらう権利を放棄できるか、詳しく見ていきます。

 

養育費を請求しない約束はあり?

 

離婚するときに、子供の親権を、母親か父親のどちらにするかもめることって多いんですよね。

 

最終的に納得させるために、

 

養育費も請求をしない

 

と約束をして離婚するケースもあります。

 

養育費は請求しない約束をすることはいいんですか?

養育費を請求しないという約束は、強迫とか錯誤など特別な事情がないかぎりは一概に無効とすることはできません。

養育費の請求権を放棄するような形で、

 

養育費として一時金を受け取るかわりに、これ以上は請求しませんという約束もあります。

 

子どもの親権のことで、感情のもつれから

 

「子どもの面倒みるというなら全責任を持て!」

 

と、なってしまうこともあります。

 

子供の側にしても、不仲な親の姿を見続けているのは、悲しいものです。

 

親権で話しをこじらせておいて、いつまでも離婚ができずにいると、子どももかわいそうに思えてきます。

 

とにかく子どもを手許に引き取って離婚するためにはやむを得ないから

 

どうしようもなく、養育費を請求しない約束することが多いようです。

 

離婚後改めて養育費の請求をすることは可能か?

養育費が必要だと離婚後に気がついた場合

 

離婚するときに養育費を請求しない、という条件をのんでも、

 

事情が変わって、どうしても子供にかかるお金が必要になる場合は、

 

養育費の請求ができるようになる場合もあります。

 

養育費を請求しない約束をしても、その後、あらためて養育費の請求ってできなくなるんでしょうか?

これは、扶養を受ける権利とかかわってくるので、裁判の例でも分かれているんです。

養育費の請求は、約束の法律上の性質が問題となるのですが、

 

民法は、扶養を受ける権利は、これを処分することができないと規定しているんです(民法881条)。

 

父母はお互いに子を扶養する義務があるので、

 

親権者になった親が、その子に代わって他方の親に対する将来の扶養請求権を放棄するような契約は無効である

 

というのが一般的な考え方なんです。

 

なので、

 

  • 養育費は請求しない(子供を育てる方)
  • 子供に関するお金は一切出さない(子供を育てない方)

こんな約束が過去にあったとしても、子は他方の親に請求できることになります。

 

けれども、親権者になるかならないかということと、養育費を負担するかしないかということは法律上は別問題なんですね。

 

そこがもどかしいところではあるんです。

 

養育費の額を言い出す前にまずは財産チェック


たいていの夫婦は、離婚を言い出した後は、二人が冷静に話し合うことが難しくなります。

 

特に、離婚後のことで、養育費の額や財産のことについては話し合えないとこじれることも多いです。

 

離婚について話し合う前に家の財産チェックをしておいた方がいいです。

 

マイホームを持っていて離婚をする場合には、売却したらどれくらいの価格になるかを出しておかないと、

 

資産価値からの処分を検討することもできません。住宅ローンはその価格から差し引きます。

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判例は分かれている

 

裁判例にも養育費の請求権の放棄を認めた例と認めない例があります。
傾向としては、

  • 養育費を請求しないと約束しても、その後、事情の変更を生じたら請求できる
  • ただし、事情の変更があったかどうかについては、厳しい見方緩やかな見方がある。
  • 養育費を請求しないという約束は、後に変更できるとしても、額を決めるにあたって斟酌される。

ということになります。

 

認めなかった例(あとで養育費を請求できない)

 

養育費請求を認めなかった例

 

「認めない」 としたのは、

 

いずれか一方が養育費を負担し、他方に養育費を請求しないと約束した場合には、

 

現に養育する親が経済上の扶養能力を喪失して、この監護養育に支障をきたし、子の福祉にとって十分でないような特別の事情が生ずるなど、

 

約束に縛られることが相当でない特別の事情が生じた場合にかぎって、あらためて養育費の請求ができるのであって、

 

原則的にはできないとしています。

 

預貯金2〜30万円と家具・調度品を取得し、養育費を請求しないということで長男(当時5歳)を引き取って協議離婚した妻から、

 

5年後になって前夫に毎月5万円の養育費を請求した

 

妻は公営住宅(家賃1万6千円)に長男と二人暮らし、事務員として月収約13万円で、

 

夫はその後再婚し、一女ができて親子三人暮らし、設計工として月収約21万円です。

 

裁判所は未だ夫に養育量を負担させることを相当とするような特別の事情は生じていない、といって請求を却下しました(福岡家裁S55.6.3審決)

 

認めた例1(あとで養育費を請求できる)

 

養育費請求を認めた例

 

認めた例 は、

 

民法880条の「・・・・扶養の程度もしくは方法について協議又は審判があった後、事情に変更を生じたときは、

 

家庭裁判所は、その協議又は審判の変更や取消をすることができる」という規定の趣旨からすると、養育費は全部自分の方で負担するからと約束して子どもを引き取った場合でも、

 

事情が変わればその約束の変更を求め、話し合いがつかないときは約束の変更を家庭裁判所に請求することができるとしています。

 

このケースは、3人の子(中2、小6、小2)を全部妻が引き取り、妻型の費用で養育すると約束しました。

 

夫は妻の両親と養子縁組をしており、むかしふうに言えば婿養子であったわけです。

 

調停離婚と調停離縁を同時に成立させたのですが、

 

妻の方で養育費を負担することになった背景には、養親は夫に対して慰謝料などを支払う代わりに3人の子の養育費を支払う、という養親対むこ養子の紛争があったようです。

 

離婚後4年して、妻は

  • 子どもの成長に伴う教育費の増加
  • 長女が18歳になって児童手当が打ち切られたこと、
  • 同居して援助を受けている実夫が退職により農業と年金収入しかなくなったこと
などを理由に、夫に養育費を請求しました。

 

妻自身には何の資産もありません。

 

夫は、離婚・離縁の時の事情から、養育費を負担できないほど貧窮していたわけではないのに、今更養育費を請求してくるのは公平に反する、

 

一介のサラリーマンの自分(再婚したから子どもができる可能性がある)より、山林等の資産を有する親と同居している妻の方がずっと生活は安定している

 

として争いました。

 

裁判所は、夫には450平方メートルのたくちがあることなど、双方の資産状態その他の事情を比較検討し、

 

事情の変更を認めて夫に養育費の支払いを命じました(大阪高裁 S56.2.16決定)。

 

教育費の増加と公的援助の打ち切り、養育費の実質的負担者の老齢化と減収などが考慮された結果と言えましょう。

 

認めた例2(あとで養育費を請求できる)

 

養育費請求を一部認めた例

 

認めた例 でも

 

今後養育費を請求しないという合意を相当重く見て、

 

養育費の負担を変更するときに、その額を決めるに当たって斟酌したものもあります。

 

つまり、一度養育費は請求しないと約束して、後から請求するに変るのであれば、

 

養育費の額は若干減るかもね、ということです。

 

長男は妻が、長女は夫が引き取って養育していましたが、妻は長女も引き取るべく申し入れたところ、

 

やはり一悶着が起きたので、事をこじらせないため、養育・生活費として30万円を受領するのと引き換えに、もう養育費などは請求しないと言明して、長女を引き取ったケース

ところが、やがて妻は養育費に不自由することになり、夫に請求してきました。当然夫は拒否しました。

 

裁判所は夫婦の約束は子の養育費の負担について、

 

養育義務者である父母の間で、母から父に子の養育費を請求しないとの合意をしたもので、

 

それは養育義務者間でのみの合意であって、これによって子に対する親としての扶養をのがれされる効果を持つものではない、と解釈しました。

 

したがって、親同士が約束したからといって、父の未成年の子に対する扶養義務がなくなるわけではなく、

 

母の方で子を扶養する能力がなくなったときは、父は子に対する扶養義務を果たさなければならないとしたのです。

 

  • 認めなかった例(養育費の請求はできない例)では、「特別の事情」といい、
  • 認めた例(養育費の請求ができた例)では、「事情の変更」
と言っています。

 

基本的な間違いはないと思いますが、「特別の」という方が事情変更の認定がやや厳しくなるのでしょうか。

 

扶養料の放棄はよく考えてから

 

親同士の合意はまったく無意味なものか、

 

というとそうではなくて、審判するときに扶養料の額を定めるに当たって有力な斟酌事由になる、と述べています。

 

裁判例からは夫婦の資産収入の明細が不明ですが、

 

額としては父は子二人の扶養料として1ヶ月2万6000円を支払え、という審判になっています(大阪高裁 S54.6.18決定)。

 

だから、よく考えずに「養育費はいりません」などをいうべきではないんですね。

 

夫婦の縁は切れても親子のつながりは切れないんです。

 

養育費は相手が持つと啖呵を切ったんだから、自分はもう無関係だ、とは言えません。

 

 

     

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