独立してうまくいくはずが、、、

夫の玉置ハルオさんは、らーめん一郎というラーメン店のチェーン店の店長として勤務していました。
年齢も41歳になり店長として活躍していました。

 

ところが、ここ数年は不況で売り上げは伸び悩み、品揃えの変更や価格の引き下げなどの努力をしたのですが、その効果もなく、ハルオさんが店長をしている店は閉店となったのです。

 

その時、店長であるハルオさんは他のチェーン店に移るという話もあったのですが、主任に降格ということだったので、責任を取る形で退社しました。

 

その後、就職活動したのですが、年齢や給料などの条件のことで求人する側の会社となかなか折り合いがつきませんでした。

 

やはり、40代になると飲食店への就職はなかなか希望に合うところがありません。

 

就職ができないから、といって手をこまねいているだけではどうしようもないので、坪数にして約10坪の豚骨ラーメンを中心とした小型の個人ラーメン店を開店しました。

 

『いままでの店長経験を生かせばうまくいくはずだ』

 

内心ではそう思っていたのです。

 

開店資金は全部で約2,000万円。
これは国民金融公庫より1000万円、資金として、貯金から500万円、親戚や知人から500万円を工面しました。

 

開店する際は十分な収支を検討して、 かつての店長としての顔をいかして仕入れなどでは安くしてもらうなど、最初から背水の陣で臨みました。

 

しかし、 経営には大きな誤算がありました。

 

今ではよほど特徴のあるラーメン店でもない限り、消費者は安く、おいしい大型有名チェーン店に流れていくのです。
これに対抗するには、品揃えと定価を安くするしかありません。

 

メニューをできるだけ安くという方針に切り替えたのですが、そこは資金のない悲しさで、すぐ近くにあるファーストフードやチェーン店にまねされると、せっかく足のよかったお客さんもすぐに来なくなるのです。

 

こうした状況で開店2ヶ月後には仕入れ商品の支払いに困り始めました。

 

当面の生活費や子供の進学にと残しておいた約100万円の貯金もつぎ込むことになりました。

 

結婚してから15年。5歳年下の妻とは仲良く生活をしてきたつもりです。
しかし、この頃から店を手伝ってもらっている妻との会話もおかしくなってきました。

 

「こんなことをしてて、私たち家族はどうなるのよ。あなたは好きでやっているからいいけど。」

 

ハルオさんは妻の毒を吐くような言い方に不機嫌になりました。

 

「俺だって家族のために一生懸命やっているんだ。」

 

ハルオさんは怒鳴りつけたかったのですが、情けなくなって言うのやめました。
すると、妻がますます夫を責めるようになったのです。

 

こんな状態なので、家庭の雰囲気も一変しました。
あんなに明るかった家庭から笑い声が消えてしまったのです。

 

高校2年生になるの長男は、早速アルバイトを始め、中学2年生の長女は、「家が暗い」と言って友達の家に入り浸って帰ってくるのも深夜が多くなりました。

 

夫は、店さえうまくいくようになれば、また、元の仲の良い家庭が戻ってくると考えました。
しかし、一度うまくいかなくなった店を立て直すのは至難の技であることが、この業界で長く働いていたこと自分が一番よく知っていました。

 

自己破産で借金地獄からの脱出

 

そんなある日、妻が仕事中に突然ヒステリックな声を出しました。

 

「もう、たくさんよ! 何のために朝から晩までこうして働いているの。借金を増やすため!!」

 

妻派そう言うと泣き出しました。

 

夫も実は疲れていました。
誰よりも、店がうまくいかずに家族に申し訳ない、と思い苦しんでいたのは自分自身の方だったからです。

 

妻に返す言葉もなく、夫は黙々と仕込みをしていました。

 

「パートの方がまだましよ。私、明日からでもパートに出ることにするわ。」

 

夫は仕入れのこともあり、一人ではやっていくことはできません。
かといってアルバイトを雇う費用もありません。

 

「頼むからもう少しがんばってくれ。」

 

哀願する夫の言葉にも、もう妻は耳を傾けませんでした。

 

翌朝から妻は店に来なくなりました。
夫は仕方なくアルバイトを雇うことにし、実際に雇ったのですが、客は増えるわけでもなし、バイトへのお給料の支払いなどの出費はいよいよ増すばかりでした。

 

加えて、最初はご祝儀で安く仕入れていた材料が、支払いの遅延などもあって安く入らなくなってしまったのです。

 

お店をあきらめきれない

 

困った夫は資金繰りに奔走するようになりました。
そして、友人知人からさらに約500万円の借金をし、返済に困るととうとうサラ金にも手を出すようになったのです。

 

やがて店には午前午後、夕方も問わずにひっきりなしに借金返済の督促の電話がかかってくるようになりました。

 

この頃には借金だけで2000万円にもなっていました。
月々の返済だけでも、100万円を超えていました。

 

こうなると、もう店などやっていける状態ではありませんでした。

 

それでも、夫はあきらめきれずに、借金をするために昔の仲間で同じ仕事をしている先輩の一人に会いました。

 

自分の店の経営が火の車であることを隠して何とか借金をしようとしました。

 

しかし、先輩はやはりこの道のプロです。店の売り上げや利益額・借金の額などの実情を聞いてきました。

 

さすがにもう隠すことはできず、正直に答えました。

 

「再建は無理だね。自己破産でもして出直した方がいい。僕が君にしてあげられることは弁護士を紹介することぐらいだよ。」

 

そう言うと、メモを取り出して、弁護士の氏名と電話番号を用紙を差し出したのです。

 

その帰り道はとても腹が立ってしかたがありませんでした。やりきれない思いと、先輩のアドバイスが気にくわなかったからです。

 

しかし、弁護士の連絡先のメモ用紙を破り捨てることはできませんでした。それだけ切羽詰まっていたのです。

 

偽装離婚へ

 

その夜、夫は先輩に言われた自己破産のことを妻に話しました。
久しぶりの夫婦の会話でした。

 

「自己破産!? 私はどうなるの? 子供はどうなるの?」

 

真剣な顔で妻は聞きました。

 

夫は、先輩から聞いたとおり、自己破産しても家族には何の影響もない、と説明しましたが妻は信用しません。

 

こんな会話を繰り返しているうちに、すっかり夫は嫌気がさしてきました。
そして、しばらく考え込んだ後で、こう提案しました。

 

「僕だって自己破産なんかしたくない。先輩にあんなことを言われて恨んでさえいるくらいだ。でも、もう自己破産するしか道はないのかもしれない。

 

・・・・・で、どうだろう。君が家族のことを心配するなら自己破産前に離婚することにしようじゃないか。
しばらくしたら、また再婚すればいい。

 

借金は増えるが慰謝料ということで少しは出せると思うけど。。。」

 

妻はびっくりして聞いていました。
こうして、二人は偽装離婚に合意したのです。

 

一週間後、離婚届を提出して夫婦は別居することにしました。
その後、店も閉店し返ってきた権利金の約200万円を慰謝料・財産分与の名目で妻に渡しました。

 

もちろん借金の返済は一切とどこおったままです。
その後、夫は住み込みのタクシーの運転手に転業しました。

 

そして、離婚届の提出から1ヶ月位した日に、夫は弁護士に依頼して自己破産の申立をすることにしました。

 

この頃になると、借金の取り立てが住み込みのタクシー会社の寮にも来るようになり、この借金地獄から一日も早く脱出したい、という気持ちでいっぱいでした。

 

自己破産は思ったより簡単に進み、申立から約一年後に借金から解放されたのです。
こわもての借金取りもすっかり姿を見せなくなりました。

 

すっかり変わってしまった妻

 

自己破産で借金がなくなった夫(正確には元夫)は、久しぶりに妻(正確には元妻)に妻と子供たちが住んでいる近くの喫茶店で会いました。

 

妻は派手な身なりをしていました。理由を聞くと実入りのいいスナックのホステスとして働き始めたということでした。

 

夫は再び入籍するつもりだったので、妻に再婚を言えば喜んでくれる、と思っていたんですが、妻は困った表情をしたのです。

 

「このままでいいんです。子供の養育費さえ払ってもらえれば・・・・」

 

妻の言葉に、夫はわけがわからず取り乱してしまいました。

 

「それはないだろう。あれは偽装離婚だよ!」

 

意外な言葉に夫は思わず大きな声を出してしまいました。
大きな声に、周りの人がおどろいて見つめていました。

 

「偽装離婚でも、無効は主張できないと店に来る弁護士さんが言っていたわ。
それに、『結婚してくれ』って言う人がいるんです。子供たちも賛成しています。もう会いに来ないでください」

 

約1年の間に、妻はすっかり変わっていました。
再び家族との仲のいい楽しい生活夢見て、苦労してきたこの1年は何だったのだろう。
がっかりして怒る気力もなくなってしまいました。

 

それがかつての妻と会った最後の日にした。

 

それから数日して、夫は働く気力もなくなり、体の具合が悪いといって仕事も休みがちになり、ただ部屋の中に閉じこもっていました。

 

そんなある日、夫のもとに1人の男が訪ねてきました。
その人は自己破産をすすめ、弁護士を紹介した先輩でした。

 

「2号店を出すことにしたんだ。どうだい、店長としてやってくれないか?」

 

失意の中にいた夫は思わず先輩にすがって泣いてしまいました。

 

その1ヵ月後に夫の店長としての忙しい生活が始まりました。
経営者としては人がよすぎて失格だったのですが、先輩のもとで働き始めると、失敗した経験も生かして着実に業績を伸ばしていきました。

 

そして2年後、夫は先輩が紹介してくれた女性と再婚することになりました。

 

そんなある日、再婚の話をどこかで聞きつけたのか長女がたずねてきました。高校生になっていました。

 

長女は、かつての妻が再び離婚したこと、そしてもう一度やり直したがっているといました。

 

しかし、気の毒には思ったのですが、「断る」と言いました。
娘に対しては困ったらいつでも訪ねてくるように、と言うことは忘れませんでした。

 

この離婚体験談でのポイントは

 

借金だけで離婚原因にはならない

 

夫の借金は妻には関係ない

 

偽装離婚も有効

 

 

不況で増える離婚

 

リストラや事業の失敗などで離婚する、こんなパターンが時代を反映して多くなっています。
いわゆる金の切れ目が縁の切れ目と言う離婚です。

 

とはいっても、妻の側からすれば、事業がうまくいかなくなったり失敗して借金だけが残った夫を見ると、生活費も入れられない甲斐性のない男としか映らないかもしれません。

 

夫にしてみれば、家族のためにがんっているんだから、と言いたいのかもしれません。

 

こうした夫婦の思っていることの行き違いが離婚の引き金となっている場合が多いです。がんばったからといって必ずしも報われるとは言えないですからね。

 

借金による自己破産と離婚の関係では、借金が多いということだけでは離婚原因とはならず、離婚することはできないんです。

 

しかし借金が原因で夫婦間のいざこざが絶えず、夫婦としての関係が破綻しているのであれば離婚が認められる場合もあるかもしれません。
参照→離婚したいけど借金とローンが気になる

 

偽装離婚も有効だけど

 

世間では妻と離婚することにして財産分与をして、債権者の取り立てを逃れるという方法を考える人がいます。
しかし、たとえ偽装離婚でもいちど離婚してしまうとその離婚の無効主張することはできない、というのが裁判所の判断です。

 

だから、もし離婚を復縁しようと思っても一方から拒否されればそれまでということになるんですね。

 

さらに、財産を残すために虚偽の離婚をした場合には、詐害行為としてその財産の移転は取り消すことができる、という民法にひっかかることにもなります。

 

さらに、夫の財産を守るための形式的な離婚によって不動産を財産分与として妻に譲渡した場合には、民法の通謀虚偽表示として無効となることもあるかもしれません。

 

やはり離婚かな、と思ったらまずは財産チェック

 

実際には偽装離婚でなく、本当に離婚したい人の方が多いです。
ただ、離婚を言い出した後は夫婦二人が冷静に話し合うことが難しくなります。

 

特に、離婚後の財産のことについては話し合えないとこじれることも多いです。
離婚について話し合う前に家の財産チェックをしておいた方がいいです。

 

もし自宅などの不動産を所有しているのなら、最終的に離婚したらお金の問題は、財産分与で清算、という方法をとります。

 

法律上、財産分与は、婚姻期間中に築いた財産を夫と妻で2分の1ずつの割合で分け合うのが原則です。

 

売却したらどれくらいの価格になるかを出しておかないと、資産価値からの処分を検討することもできません。
住宅ローンはその価格から差し引きます。

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