イヤでたまらないから
品が良くて、昔でいうところの「いいところの奥様」といった風情の山田明代さんは57歳。
彼女の周りには清楚さが醸し出されていて、夏の暑い時期でも涼しげな空気が流れているような感じがします。
「父を早くに亡くして母一人の手で育てられました。ですから、結婚を考えるときも母に言われるがままに相手を選んでしまったところがあったんです。
結婚で条件とかはあったんですか?
母がこだわった条件は、
- 大卒で堅い会社に勤めていること
- 家を継ぐ苦労がないように長男はダメ
- 家庭内の常識が違いすぎるのは苦労になるから関東出身の方
の3つでした。
それまで真剣に男の方とお付き合いしたことがなかったんですけど、学校を出てお勤めした会社でちょっといいな、と感じた方がいて、たまたまその方が条件通りでしたの。それが今の夫です。
古き良き日本の伝統そのままのような話しですね。
夫の実家は、江戸時代には庄屋だったという家柄です。
結婚が決まる前に泊まりがけでご挨拶にうかがいました。
でも、ふすまを取り払って40畳にした大きな部屋に、ご親戚や地元の名士という方々が集まっている前で、お一人お一人に挨拶して回るんです。
みんないかにも品定めするような目でじろじろ。
イヤでイヤでたまらず、東京に帰ってから「夫に結婚はなしにしてください、私はイヤになりました」と言ったんです。
ところが、いまのご主人が繰り返し繰り返し熱心に翻意を促すのに加えて、
母の「あんなにしっかりした人はいないし、請われて嫁ぐほど幸せなことはない」という言葉もあって結局結婚しました。
それから35年になったんです。
長男ができて、夫の実家に報告に戻ったら、お義母さんによばれて「これで晴れて嫁になりましたね」と言われたんです。
そのときは言葉のアヤだと思っていたんですが・・・」
あとでご主人にそのことを話すと、
「あぁ オフクロが籍を入れてくれたらしいよ」
と平然と返されたんです。
田舎などでは以前はよくあったのですが、結婚してすぐには何があるかわからないから、と婚姻届を出さず、ちゃんと夫婦としてやっていける目処がついて初めて正式の書類を作るというものだったのです。
けれどことのときばかりは明代さんは本気で怒りました。
なんと2年近くも内縁関係にさせられていたわけですから。
しかも、夫の方はそれを知っていたのです。
その35年前からずっと夫とは別れるしかない、と思ってきました。
これまでに何度も別れ話はあったんです。
でも、そのたびに夫にそれだけはやめてくれ、子供達のことも考えろ、といわれて、今になってしまいました。
3人のお子さんが全員結婚して、それぞれに孫もできたんですよね。
そして、旦那さんも定年退職。いくらなんでももういいはずだ、と思ったんですね。
子供が自立したからでもないし、いまさら人生やり直したいというわけでもありません。
ただ 夫がイヤでイヤでたまらない から離婚したいのです。
50代の離婚相談はほとんど女性
50代後半から60代の離婚相談をするのはほとんどが女性側からです。
少し前までは「濡れ落ち葉離婚」などとも言われていましたが、必ずしも日頃から夫に邪険にされて、というわけでもないことが多いようです。
むしろ予想すらしなかった離婚話に、驚愕する夫もいるくらいです。
具体的な不満やきっかけがあるというより、夫やその存在に虫ずが走るような嫌悪感をもたれている方が多いようです。
長い時間,、我慢を重ねてきた結果なので、ほとんどの妻の離婚の意思は大変堅いことが多いです。
熟年離婚の先の生活
たいていは離婚しても幸せな人生がある、と考えることができますが、この50代の世代の離婚問題は慎重になることも必要です。
それは本当にまともな生活ができるかどうかが、わからない場合があるからです。
結婚解消となれば、財産や年金の多くの部分を半分ずつにしなければなりません。
ところが、別れる夫婦がともにいまさら仕事をして生活費を稼ぐということが考えにくい年齢になっている場合、分けてしまった財産ではどちらも個別に生計を立てていくのが難しいこともあるのです。
50代を過ぎてから別れたとしてもまだそこからの人生があります。
子供がいたとしても成長しているし、精神的には”独身”の開放感に戻る事ができます。
でも、待ち望んだ開放感の先に、もし余裕がない貧困しかないのなら、むしろ確実な生活を大事にする選択肢も考えておかなければならないですね。
離婚したいと思いつつ、離婚を言い出した後は、夫婦二人が冷静に話し合うことが難しくなります。
特に、離婚後の財産のことについては話し合えないとこじれることも多いです。
離婚について話し合う前にある程度、家にある財産を把握していると、心の余裕を持つことができます。
大まかでいいのでまずは、この家にどれくらいの夫婦での財産があるのかを把握することです。
電化製品など細かいものは後回しです。
その際には、現在の自宅の価値と住宅ローンの残高はあらかじめ計算しておくと、有利に離婚条件を展開できる可能性があります。
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